
新築住宅の引き渡し前に行われる「竣工検査(しゅんこうけんさ)」。
「せっかくだからちゃんと確認したい」と思いながらも、何を見ればいいかわからず、ハウスメーカーの担当者に連れられるまま30分で終わってしまった——そんな話を、私は現場で何度も耳にしてきました。
一級建築士として20年以上、数多くの新築物件を見てきた立場から言わせてください。竣工検査は、施主(買い主)が唯一、堂々と「文句を言える」機会です。 ここで見逃した不具合は、後から指摘しても「入居後についた傷では?」と言われてしまうリスクがあります。
この記事では、竣工検査で実際に私がチェックする10のポイントを、わかりやすい言葉でお伝えします。
そもそも竣工検査とは?
竣工検査とは、建物が完成した後、施主が建物を受け取る前に行う最終確認のことです。ハウスメーカーや工務店の担当者と一緒に建物内を歩き回り、不具合がないかを確認します。
ここで問題が見つかれば、引き渡し前に直してもらうことができます。逆に言えば、ここで見逃したものは「引き渡し後の問題」として扱われてしまうことがほとんどです。
所要時間は一般的な住宅で1〜2時間程度。焦らず、しっかり時間を確保して臨みましょう。
竣工検査で見るべき10のポイント

1. 床の傾きと床鳴り

床に傾きがあると、長期的に建具の開閉不良や構造的な問題につながることがあります。スマートフォンの水平器アプリを使って、各部屋の床の水平を簡単にチェックできます。
また、歩きながら床がギシギシと音を立てないかも確認してください。施工直後の床鳴りは、フローリング材の固定不良が原因のことが多く、引き渡し前であれば対応してもらいやすいポイントです。
チェック方法: 部屋の四隅と中央を歩いて確認。気になる箇所は担当者に指摘してその場でメモしてもらう。
2. 建具(ドア・引き戸・窓)の開閉
全ての扉・引き戸・窓を実際に開け閉めしてください。
確認したいのは以下の3点です。
- スムーズに開閉できるか
- 閉めたときに隙間がないか
- 鍵がきちんとかかるか
特に引き戸は、レールのゴミや取り付けの傾きで動きが重くなりやすいです。「建てたばかりだから大丈夫」と思わず、全箇所確認することをおすすめします。
3. クロス(壁紙)の浮き・剥がれ・継ぎ目

壁紙は、部屋の四隅と天井との境目を中心に確認します。
よく見られる不具合は「継ぎ目の隙間」「角の浮き」「気泡が入っている」などです。明るい場所で斜めから壁を見ると、凹凸や浮きが見えやすくなります。
クロスは施工後しばらくすると乾燥で縮む素材もあるため、引き渡し直後に問題がなくても後から隙間が出ることもあります。気になる箇所は写真に残しておきましょう。
4. コーキング(シーリング)の仕上がり
浴室やキッチン、洗面台の周囲など、水回りの隙間を埋めているゴム状の素材が「コーキング」です。
ここが雑に仕上がっていると、防水性能に影響が出ます。確認ポイントは「均一に打たれているか」「空気が入っていないか」「剥がれかけていないか」の3点です。
細い部分なので見落としがちですが、水漏れや カビの原因になりやすいため、しっかり確認しておきましょう。
5. 換気システムの動作確認
2003年以降に建てられた住宅には、24時間換気システムの設置が義務付けられています。スイッチを入れて、各換気口から実際に風が出ているか確認してください。
換気扇のフィルターが施工時のホコリで詰まっている場合もあります。引き渡し前にきれいな状態で受け取るためにも、確認が必要です。
6. 水回りの排水・水圧チェック
キッチン、浴室、洗面台、トイレ——すべての水回りで実際に水を流してみてください。
確認すること:
- 水が詰まらずスムーズに流れるか
- 水圧が適切か(極端に弱くないか)
- 排水時に異音がしないか
- 水を止めた後、ポタポタと水漏れしていないか
水回りの不具合は後から発見すると、壁や床を開口して調査が必要になるケースもあります。引き渡し前に必ず確認しましょう。
7. コンセント・照明・スイッチの動作
全てのコンセント、照明スイッチ、インターホン、テレビアンテナ端子の動作を確認します。
スマートフォンの充電器を持参すると、コンセントの通電チェックがスムーズにできます。「どうせ全部動くだろう」と思いがちですが、配線ミスによる不具合は意外と現場で発生します。
8. 外壁・屋根まわりの目視確認
外壁のひび割れ、塗装ムラ、コーキングの打ち漏れを確認します。屋根は直接上がることは難しいですが、可能であれば担当者に写真を見せてもらいましょう。
外壁と基礎の境目(水切り部分)も重要です。隙間があると雨水が入り込む原因になります。
9. 断熱材の施工状態(可能であれば)
天井裏や床下の点検口を開けて、断熱材がきちんと施工されているか確認できれば理想的です。断熱材がずれていたり、欠損していたりすると、冷暖房効率や結露に影響します。
点検口の場所は事前に担当者に聞いておくとスムーズです。
10. 設備機器の取扱説明書・保証書の確認
最後は書類の確認です。エコキュート、システムキッチン、浴室乾燥機など各設備の取扱説明書と保証書が揃っているか確認しましょう。
保証書には「いつから保証が始まるか」「どこに連絡するか」が記載されています。引き渡し後にまとめてファイリングしておくと、万一のときに慌てずに済みます。
竣工検査を受けるときの3つの心構え

①遠慮しない
「細かいことを指摘したら嫌われるかも」と思う方が多いですが、それは無用な気遣いです。担当者も、引き渡し前に問題を解決したいと思っています。気になった点は必ずその場で口に出しましょう。
②写真を撮る
不具合を発見したら、必ずスマートフォンで写真を撮っておきましょう。後から「言った・言わない」のトラブルを防ぐためにも、記録が重要です。
③時間を十分に確保する
竣工検査は最低でも2時間は確保してください。「30分で終わらせましょう」という雰囲気になっても、焦らないことが大切です。
まとめ
新築住宅の竣工検査は、施主が主役です。
プロに任せきりにせず、この記事のチェックポイントを手元に持ちながら、自分の目で建物を確認してみてください。
私自身、20年以上この仕事をしていて思うのは、「施主が真剣に見ている」という姿勢が、現場の職人さんたちの丁寧な仕事につながるということです。
あなたの大切な家を、しっかり受け取る準備をしていただければ幸いです。
著者プロフィール
一級建築士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士。不動産会社勤務20年以上。3児のパパ。住宅購入・不動産投資について、プロの視点と施主目線の両方から発信中。



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