この記事はこんな人に向けて書いています
- 職業・立場:小規模〜中規模の設計事務所で、初期企画・設計提案・施主打合せの準備を担う一級建築士または設計担当者
- 悩み・状況:周辺環境、類似事例、競合、施主の要望を調べるほど、図面検討や対話に使う時間が減ってしまう
- 達成したいこと:設計判断を手放さず、提案準備の下ごしらえを速くして、企画の質を上げたい
企画提案で本当に時間を使うのは、図面を描き始めてからではありません。周辺環境を調べ、似た用途の事例を集め、施主の要望を言葉にし、何を最初に確認すべきかを並べる。資料は増えるのに、肝心の「この計画で何を決めるべきか」が見えにくくなる瞬間があります。
Manusは、こうした設計前の情報収集と整理に使いやすいAIエージェントです。複数の公開情報を調べ、比較し、表やレポートのたたき台にまとめる作業を進められます。一方で、建築基準法の適合、敷地・境界・インフラの条件、コスト、工程、設計上の結論をAIに任せることはできません。この記事では、Manusを「設計の代行者」ではなく、判断前の論点を整える調査アシスタントとして使う方法を解説します。
最初に押さえる結論
Manusに任せるのは、公開情報の収集、比較表の下書き、企画論点の整理、資料構成のたたき台まで。法令・敷地・契約・金額・工程・設計判断の確定は、必ず建築士や責任者が一次資料を確認して行います。
Manusが建築の企画提案で役立つ作業と、任せてはいけない判断
Manusの強みは、単発の文章作成よりも、調査・整理・形式化をひとつの流れとして扱えることです。公式には、複数の調査タスクを並行して処理し、レポートやデータセットにまとめる機能、調査・分析・可視化を含むレポート作成機能が案内されています。Wide Research、AIレポートジェネレーターの説明も、使い始める前に確認しておくと役割をつかみやすいでしょう。
| 作業 | Manusに任せやすい部分 | 人が必ず確認・判断する部分 |
|---|---|---|
| 周辺環境の調査 | 公開情報の収集、比較観点の整理、出典候補の一覧化 | 現地の状況、道路・高低差・日照・騒音、行政窓口での確認 |
| 類似事例の比較 | 用途・規模・コンセプト・公開写真・特徴の比較表 | 計画への適用可否、写真と実態の差、設計の独自性 |
| 施主要望の整理 | ヒアリングメモの論点分け、確認質問の下書き | 優先順位、予算・工程への影響、合意事項 |
| 企画書の準備 | 章立て、必要資料の洗い出し、説明順の提案 | 提案内容、法令・コスト・仕様の確定、最終表現 |
AIの出力は、もっともらしく整っているほど注意が必要です。特に公開ウェブ情報は更新日、対象地域、前提条件が混ざります。「出典がある」ことと「今回の計画に使える」ことは別だと考え、元ページを開き、日付・対象・根拠を確かめてください。
使う前に決める3つの情報管理ルール
1. 未公表の案件情報を渡さない
施主名、所在地、地番、図面、写真、見積金額、契約条件、未公表の計画、協力会社の情報は、そのまま入力しません。用途を「小規模な物販店舗」「都市部の共同住宅」のように抽象化し、調査や比較に必要な条件だけを渡します。組織の情報管理規程や契約上の取り決めがある場合は、そちらを優先してください。
2. 事実・仮説・希望を分けて渡す
企画段階では、確定事項とアイデアが混ざりがちです。プロンプトに「確定」「仮説」「未確認」とラベルを付けるだけで、AIが仮説を事実のように扱う危険を減らせます。出力にも、その区別を残すよう指示しましょう。
3. 出典一覧を必ず残す
提案資料へ使う情報は、URL、確認日、掲載主体、該当箇所を残します。Manusに出典欄を作らせても、それだけで確認を終えないことが大切です。最終的には、設計担当者が一次資料や公式情報を開き、今回の提案で引用できる内容かを判断します。

設計事務所の提案準備で使えるManusプロンプト6選
以下の角括弧は、固有名詞や案件を特定できる情報を入れず、公開情報で説明できる条件へ置き換えてください。初回は小さなテーマで試し、出典の扱いと出力の癖を確認してから対象を広げるのが安全です。
1. 周辺環境の「公開情報だけ」を調べる
あなたは建築企画の初期調査を支援するリサーチャーです。
[対象エリア]について、公開情報だけを使い、企画提案の前に確認すべき周辺環境の論点を整理してください。
出力項目:
1. 公共交通・主要動線
2. 周辺施設・生活利便性
3. 公開されている都市計画・再開発・地域方針
4. 同種用途の集積状況
5. 現地と行政窓口で確認すべき未確認事項
6. 各情報の出典URLと確認日
ルール:未確認の敷地条件、法令、境界、インフラは推測しない。公開情報にないことは「要現地確認」または「要行政確認」と記載する。
このプロンプトの目的は、現地を見ずに敷地を評価することではありません。最初の現地調査や役所調査で、何を見落とさないかを決めることです。出力を持って現地へ行くと、眺める対象が少し具体的になります。
2. 類似事例を「設計意図」で比較する
[用途]の建築事例を、公開情報から10件まで調査してください。
面積や金額を推測せず、公開されている情報だけで比較表を作成してください。
比較項目:
・プロジェクト名、所在地(公開されている範囲)
・設計者・竣工年(公開されている場合)
・コンセプト
・動線、共用部、外観、環境配慮で読み取れる工夫
・掲載写真や図面から断定できない点
・出典URL
最後に、今回の企画で検討材料にできる論点を5つ、模倣してはいけない理由を含めて整理してください。
事例調査は、画像を集めることが目的になりやすい作業です。比較の軸を先に決めると、「雰囲気が近い」だけで終わらず、動線、用途、地域性、環境性能など、設計で使える論点へ戻れます。設計事例そのものを深く調べるときは、Perplexityで設計事例をリサーチする方法もあわせて読んでください。
3. 施主ヒアリングの前に「聞くべき順番」を作る
以下は、建築企画の初回ヒアリング前に把握できている条件です。
確定事項、希望、未確認事項を分け、施主への確認質問を優先順に15個まで作成してください。
[用途]
[想定利用者]
[希望する雰囲気]
[おおまかなスケジュール]
[すでに分かっている条件]
出力ルール:
・予算、敷地、法令、契約について推測しない
・質問ごとに「なぜ先に聞く必要があるか」を1行で添える
・専門用語を使う場合は短い補足を付ける
初回打合せで大切なのは、質問を増やすことではなく、話の順序を作ることです。用途、利用者、優先順位、決める時期の順に聞けば、後から聞き直す回数を減らせます。施主の言葉を最終的にどう要望書へ落とすかは、設計者が顔を見て判断する部分です。
4. 企画の論点を「確定・仮説・確認待ち」に仕分ける
以下の企画メモを、提案準備用の論点表に整理してください。
列:論点/現時点の情報/区分(確定・仮説・確認待ち)/次に確認する相手または資料/確認しない場合のリスク
ルール:書かれていない事実を追加しない。法令・コスト・工程の結論を出さない。不明な点は確認待ちにする。
[企画メモ]
この表は、提案書を作るためのものというより、提案書をまだ作らない理由を見つけるためのものです。確認待ちのままきれいなパースや説明文へ進むと、後から資料全体を直すことになります。
5. 企画書の骨組みだけを作る
以下の条件で、建築企画提案書の章立て案を作成してください。
対象: [用途・規模を特定しない説明]
読み手: [施主・発注者・社内決裁者など]
今回伝えたいこと: [企画の目的]
必要な章:
・企画の背景と目的
・現状の整理
・利用者・運用の視点
・設計で検討する論点
・今後の確認事項
・次の打合せまでに必要な判断
ルール:完成した提案内容や数値を作らない。各章で必要な一次資料と、作成者が確認すべき点を箇条書きにする。
Manusに提案書を「完成させて」と頼むと、未確認の部分まで文章で埋めてしまうことがあります。最初は骨組みだけを作り、どの章に何の資料が必要かを見えるようにする使い方が向いています。
6. 出典と断定表現を送る前に点検する
以下の企画資料案について、設計者が送付前に確認すべき項目だけをチェックリストにしてください。
確認観点:
・公開情報の出典URLと確認日
・事実と仮説の区別
・未確認の敷地・法令・インフラ条件
・画像や事例の利用条件
・費用・工程・性能に関する断定表現
・施主との合意が必要な事項
文章は書き換えず、確認項目だけを出してください。
[資料案]
提案資料で危ないのは、誤字よりも、確定していない条件を断定したように読ませてしまうことです。AIには完成品を作らせるより、自分が疑うべき箇所を増やす相手として使うと、実務の安全性を保ちやすくなります。

15分で始める、企画提案の準備ワークフロー
- 3分:今回の企画で公開してよい条件、渡してはいけない情報を分ける。
- 4分:プロンプト1で周辺環境の確認論点、プロンプト2で類似事例の比較軸を作る。
- 3分:プロンプト3と4で、初回打合せの質問と確認待ちの論点を整理する。
- 3分:プロンプト5で企画書の章立てと必要資料を洗い出す。
- 2分:プロンプト6を使い、出典・断定・未確認事項を点検する。
15分で提案書を完成させることは目的ではありません。15分で「何を調べるか」「誰に確認するか」「今は書かない方がよいこと」を整理できれば、その後の図面検討や施主との対話はずっと進めやすくなります。
現場の裏話:提案品質は「調べた量」より「確認すべき論点」で決まる
企画の初期ほど、資料を集めるほど安心した気持ちになりやすいものです。ただ、施工管理、設計監理、発注者側PMに関わるなかで感じるのは、後から効いてくるのは資料の量ではなく、「誰が・何を・いつ確認するか」が残っていることです。AIで調査を速くするなら、調べた情報を増やすためではなく、確認するべき論点を先に表へ出すために使う方が、提案はぶれません。
関連するAI活用の記事
企画前の調査が整理できると、設計事例の深掘り、積算前の確認、施工中の文書整理まで、AIの使いどころを業務ごとにつなげられます。
- 建築士がPerplexityで設計事例をリサーチする方法
- 設計監理の議事録をChatGPTで整える方法
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- 建設業のAI活用|Claudeで工事日報・安全書類・協力会社連絡を速くする方法
よくある質問
Manusに敷地資料や図面をアップロードしても大丈夫ですか?
案件の情報管理規程、契約、施主との取り決めを確認せずに、図面、所在地、見積、未公表情報をアップロードすることはおすすめしません。まずは公開情報だけで試し、組織として利用する場合は権限、データの扱い、承認フローを確認してください。
Manusが調べた法令情報をそのまま提案に使えますか?
使えません。法令、条例、地区計画、道路・境界、インフラの条件は、対象地と計画内容によって変わります。AIの出力は確認項目の下書きとして扱い、行政窓口、法令集、一次資料、専門家への確認を経て判断してください。
ChatGPTやPerplexityとどう使い分けますか?
比較表や資料の骨組みまで一続きで作りたい初期企画にはManus、特定の設計事例や出典を深掘りしたいときはPerplexity、打合せ後の文書を整えたいときはChatGPTという分け方が分かりやすいでしょう。実際には、案件の情報管理条件と作業の目的に合わせて選ぶことが大切です。
提案書作成の時間はどのくらい短くなりますか?
用途、調査範囲、資料の質、確認工程で変わるため、一律の時間短縮は約束できません。まずは公開情報の一覧化やヒアリング質問の整理など、確認しやすい小さな作業から試し、手戻りが減るかを見てください。
まとめ:Manusは「答えを出す道具」ではなく、企画の前に論点をそろえる道具
建築の企画提案でManusを使う価値は、設計の答えをAIに出してもらうことではありません。公開情報を集め、事例を比較し、施主に聞くべきことと、まだ確認できていないことを分ける。その下ごしらえを速くし、設計者が現地・図面・対話に時間を戻すことです。
最初は、次の企画でプロンプト4を使い、メモを「確定・仮説・確認待ち」に分けるだけで十分です。小さく試し、出典を開き、最終判断を人が持つ。その積み重ねが、AIを使っても薄くならない提案につながります。
参考:Manus Wide Research / Manus AIレポートジェネレーター / アナリストのためのManus





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