建築実務でAIはどこまで使える?一級建築士が確認申請・図面チェック・RFIで使えるプロンプトを解説

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ChatGPTやGeminiなどの生成AIを、仕事で使う機会が増えてきました。

建築の仕事でも、

「確認申請のチェックにAIを使えないか」

「図面と仕様書の食い違いを見つけてもらえないか」

「現場から来た質問を整理してもらえないか」

と考えたことがある人は多いのではないでしょうか。

私自身、一級建築士として施工管理、設計監理、発注者側の業務などに関わってきましたが、建築実務では「答えを出すこと」以上に、大量の資料から確認すべきことを拾い出し、誰に何を確認するのか整理する作業に時間を取られます。

この部分は、生成AIとかなり相性がいいと感じています。

一方で、建築実務で怖いのは、AIがもっともらしく間違えることです。

特に建築基準法、自治体条例、施工方法、安全性などについて、AIの回答だけを見て「問題ない」と判断する使い方は避けるべきです。

この記事では、

  • 建築実務のどこでAIを使えるのか
  • AIに任せない方がいい仕事は何か
  • 確認申請で使えるプロンプト
  • 図面・仕様書のチェック方法
  • 施工要領書やRFIへの使い方
  • 竣工検査記録への使い方
  • 建築実務でAIを使うときの注意点

を、実務経験を踏まえて整理します。

先に結論を書くと、私は生成AIを、

「建築士の代わりに判断する人」ではなく、「確認漏れを減らすための補助者」

として使うのが、現時点では最も実用的だと考えています。


目次

建築実務でAIに任せられること・任せないこと

まず、ここを明確にしておきましょう。

生成AIが得意なのは、すでに存在する情報を整理・分類・比較・文章化する仕事です。

反対に、法令適合や施工の可否、安全性など、専門家が責任を持って判断する仕事をAIに任せるべきではありません。

建築実務AIとの相性最終確認・判断
資料の要約・整理◎人が確認
議事録の整理◎担当者
RFI・質疑書の下書き◎担当者
図面・仕様書の差異候補抽出○設計者・担当者
確認申請の確認項目整理○設計者・建築士等
施工要領書の確認項目整理○監理者・施工担当者
竣工検査記録の整理○検査担当者
法令適合の最終判断×建築士・審査側等
施工可否・安全性の判断×責任者
検査の合否判定×検査担当者

この線引きを最初に決めておくだけでも、AIの使い方はかなり変わります。

AIに「答えを出してください」と頼むのではなく、

「確認すべきことを整理してください」

と頼むわけです。

この違いは、建築実務でAIを使ううえで非常に重要だと思います。


国土交通省も建築確認でAI活用を進めている

建築分野でAIを使うこと自体は、すでに実証段階を超えつつあります。

国土交通省は2025年11月、AIを活用した「建築確認申請図書作成支援サービス」の提供開始を発表しました。

このサービスでは、2階建て木造一戸建て住宅などを対象に、確認申請図書について必要な事項の一部が記載されているかをAIで評価します。

ここで注目したいのが、国土交通省自身が、

「建築基準法令・関係法令への適合性を審査するものではない」

と明確にしていることです。

つまり国が進めるAI活用でも、

AI=申請図書などのチェックを支援するもの

と、

人=法適合等を判断するもの

が分けられています。国土交通省

これは民間でChatGPTなどを利用するときにも参考になる考え方です。


1.確認申請前のチェック項目をAIに整理させる

確認申請業務では、計画概要、配置図、平面図、立面図、求積図、構造資料、設備資料など、多くの情報を確認します。

AIに、

「この建物は建築基準法に適合していますか?」

と聞きたくなりますが、私はこの使い方はおすすめしません。

代わりに、

「確認すべき項目を洗い出す」

ところまでAIに担当させます。

コピペ用プロンプト

あなたは建築確認申請のチェック作業を補助するアシスタントです。

添付した計画概要・図面・法令・条例・告示のみを根拠として、確認申請前に確認すべき項目を整理してください。

次の6項目の表にしてください。

  1. 確認項目
  2. 根拠資料
  3. 条文・ページ
  4. 計画上確認すること
  5. 不足している情報
  6. 確認すべき相手

資料に根拠がない場合は「判断不能」、画像等で読み取れない場合は「読み取り不可」と記載してください。

法令適合、確認申請の可否、許可・不許可については結論を出さないでください。

ポイントは、

「分からないことを勝手に補完させない」

ことです。

AIは空白があると、それらしい回答を作ってしまう場合があります。

だから最初から、

「判断不能」

「読み取り不可」

「資料不足」

という回答を許可しておきます。


2.図面と申請書・仕様書の食い違い候補を探す

これはAIと相性のいい仕事の一つです。

例えば、

  • 申請書と平面図の床面積
  • 仕上表と平面詳細図
  • 建具表と平面図
  • 設備図と意匠図
  • 特記仕様書と施工要領書

などです。

人がチェックすると、どうしても見落としが発生します。

そこでAIには、

「どちらが正しいか」ではなく、「記載が一致していない箇所を探す」

という仕事をさせます。

コピペ用プロンプト

添付資料を比較し、記載内容が一致していない可能性がある箇所を抽出してください。

出力項目は、

・確認項目
・資料Aの記載
・資料Bの記載
・該当ページまたは図面番号
・差異の内容
・追加で確認すべき資料
・確認すべき担当者

としてください。

どちらが正しいかは判断せず、「差異候補」として整理してください。

数値や文字を読み取れない場合は推測せず、「読み取り不可」としてください。

ここでも大切なのは、AIに正誤判定までさせないことです。

例えば、

平面図:125.4㎡
申請書:123.8㎡

だった場合、

「正しい床面積を決めて」

ではなく、

「床面積の記載が一致していない」

ところまで抽出してもらいます。

正しい数値は元データや計算根拠を確認して、人が判断します。


3.施工要領書の確認項目を整理する

施工段階では、設計図書、特記仕様書、標準仕様書、メーカー仕様、施工要領書など複数の資料を見比べる場面があります。

ここでもAIは使えます。

例えば、

設計図書 → 特記仕様書 → メーカー仕様 → 施工要領書

という資料を比較し、

  • 記載が違うところ
  • 記載されていないところ
  • 確認が必要なところ

を整理させます。

コピペ用プロンプト

添付した設計図書、特記仕様書、メーカー資料、施工要領書を比較してください。

次の項目で確認表を作成してください。

・確認項目
・設計図書の記載
・施工要領書の記載
・メーカー資料の記載
・差異または不足している情報
・確認すべき相手
・根拠資料・ページ

施工方法の可否、安全性、承認の可否については判断しないでください。

資料間で異なる記載がある場合は「要確認」としてください。

実務では「違っている=間違っている」とは限りません。

設計変更が反映されていたり、メーカー仕様による調整があったり、別の正式資料が存在する可能性もあります。

そのためAIには、

「間違いを探す」のではなく「確認が必要な差異を探す」

と指示するのが使いやすいです。


4.RFI・質疑書のたたき台を作る

個人的にAIと相性がいいと思うのが、RFIや質疑書の整理です。

現場では、

「この納まりどうしますか?」

だけでは設計者も回答しづらいことがあります。

何が分かっていて、何が分からないのか。

どの図面のどの部分なのか。

いつまでに回答が必要なのか。

これらを整理するだけで、質問の質はかなり変わります。

コピペ用プロンプト

以下の情報から、設計者へ提出するRFIの下書きを作成してください。

【該当図面】
【該当箇所】
【現在確認できている事実】
【不明点】
【確認したい内容】
【回答希望日】

質問者側の推測と、図面・資料に記載されている事実を分けてください。

設計意図や施工方法を推測して回答せず、回答が必要な事項を簡潔に整理してください。

AIが勝手に回答するのではなく、

「人に聞くための質問を作る」

という使い方です。

これはかなり実務的です。


5.会議議事録から「未決事項」だけを抽出する

設計会議や定例会議では、多くの議題が出ます。

問題なのは会議後です。

「結局、誰が何をやるんだっけ?」

となることがあります。

そこで議事録から、

  • 決定事項
  • 未決事項
  • 担当者
  • 回答期限
  • 次回確認事項

だけをAIに整理させます。

コピペ用プロンプト

以下の会議記録から、実務上必要な事項を整理してください。

出力は、

  1. 決定事項
  2. 未決事項
  3. 確認事項
  4. 担当者
  5. 期限
  6. 根拠となる発言または資料

の表にしてください。

担当者や期限が明記されていない場合は推測せず「未定」としてください。

これだけでも、会議後の作業はかなり楽になります。

ただし、録音データや議事録に個人情報・機密情報が含まれる場合は、会社の情報管理ルールや使用するAIサービスの取り扱いを事前に確認してください。


6.竣工検査の指摘事項を整理する

竣工検査でもAIは「整理役」として使えます。

例えば指摘事項を、

  • 写真番号
  • 撮影場所
  • 部屋
  • 部位
  • 指摘内容
  • 担当者
  • 対応期限
  • 再確認日

に整理します。

コピペ用プロンプト

以下の竣工検査記録を一覧表に整理してください。

・写真番号
・場所
・部位
・記録されている状態
・関連図面
・担当者
・対応期限
・再確認日

「不良」「合格」「是正済み」などの判定は行わず、資料に記載されている事実のみを整理してください。

ここでも、

「是正済みかどうか」

をAIに判断させません。

現地で確認した担当者が判断します。

写真だけでは分からない部分も多いためです。


建築実務でAIを使うなら「判断台帳」を作る

AIを実務で使うなら、私は回答をそのまま採用するより、最低でも次の4項目を残す方がいいと思います。

事実未確認事項確認先根拠
資料に実際に記載されている内容AIでは判断できないこと設計者・監理者・行政庁など図面番号・ページ・URL・版

ポイントは、

AIの回答と正式な判断を混ぜないこと。

です。

「問題なし」

「法適合」

「承認済み」

などの言葉をAIに簡単に付けさせない方が安全です。

正式な判断を記録するなら、

誰が・いつ・何を根拠に確認したのか

を残します。


建築AIで避けたい3つの使い方

AIは便利ですが、使い方を間違えると逆に確認作業が増えてしまいます。

特に私は、次の3つは避けた方がいいと考えています。

1.「この建物は建築基準法に適合していますか?」と丸投げする

AIは案件所在地の条例、行政庁の取扱い、最新の法改正、図面の読み取り条件などを完全に把握しているとは限りません。

AIには、

「確認すべき法令・条件を整理する」

ところまで担当させます。

最終的な確認は、最新版の法令・条例・行政庁資料等の一次情報へ戻します。


2.AIが出した条文番号や数値をそのまま使う

生成AIは、存在しない条文や数字をもっともらしく提示することがあります。

条文番号が表示されても、

必ず原文を確認する。

これは徹底した方がいいでしょう。

特に建築基準法だけでなく、自治体条例、地区計画、景観、消防、盛土など、案件ごとに条件が変わるものには注意が必要です。


3.顧客名・住所・未公開図面を何でも入力する

これはAIの性能とは別の問題です。

顧客名、住所、地番、未公開図面、見積、工程表、個人情報などを入力する前に、

  • 会社の情報管理規程
  • AIサービスの利用規約
  • 保存設定
  • 学習利用の設定
  • 契約上の守秘義務

などを確認します。

必要なら、

案件名を記号化する、住所を一般化する、不要部分を削除する

などの対応を取ります。


AIを使う前に確認したいチェックリスト

実際の案件で使うなら、最低限これだけは確認しておきたいところです。

  • 入力資料の名称・版・作成日を確認した
  • 最新版の資料を使っている
  • 法令・条例の施行日を確認した
  • 顧客情報や個人情報の扱いを確認した
  • AIに最終判断を求めていない
  • 読み取れない部分を推測させていない
  • AIが示した根拠を原資料で確認した
  • 最終確認者を決めている
  • AIの回答と正式な承認記録を分けている

AIを導入するとき、つい「どのAIが一番賢いか」に目が向きます。

でも建築実務では、

誰が最後に確認するのか

を決めることの方が重要だと思います。


よくある質問

ChatGPTの回答を確認申請にそのまま使えますか?

そのまま使うことはおすすめできません。

確認項目や不足資料を整理する補助として利用し、法令、条例、告示、行政庁の取扱い、設計図書などの原資料を確認します。

必要に応じて、設計者、所管行政庁、確認検査機関などに確認してください。


建築基準法をChatGPTに質問するのはダメですか?

質問すること自体が問題なのではありません。

ただし、

「この建物は適法ですか?」

と最終判断を求めるより、

「この計画で確認すべき法令・条件を整理してください」

と使う方が適しています。

AIから得た条文や解釈については、必ず最新の一次情報を確認します。


図面をChatGPTなどにアップロードしても大丈夫ですか?

一律には言えません。

利用するサービスの契約・設定と、所属先の情報管理規程によって変わります。

顧客名、住所、地番、未公開情報などが含まれる場合は特に注意が必要です。

業務で利用する場合は、会社や組織のルールを確認したうえで使ってください。


AIと設計者の判断が違ったらどちらを信用しますか?

AIの回答を優先するのではなく、まず原資料に戻ります。

図面、仕様書、法令、計画条件、現地状況などを確認し、資格と権限を持つ担当者が判断します。

必要であれば行政庁や確認検査機関などへの確認も行います。


まとめ|建築AIは「答えを出す人」ではなく「確認漏れを減らす補助者」

建築実務で生成AIを使ってみると、

  • 資料整理
  • 差異候補の抽出
  • 確認項目の洗い出し
  • RFIの下書き
  • 議事録整理
  • 検査記録整理

などにはかなり可能性があります。

一方、

法令適合・施工可否・安全性・契約解釈・検査合否

などをAIに丸投げするのは別の話です。

私自身、施工管理、設計監理、発注者側の業務などを経験してきましたが、建築の仕事では「答えを知っていること」だけでなく、

何を確認する必要があるのかを見つけ、正しい資料と正しい人に戻すこと

が非常に重要だと感じています。

だからこそ、AIとは相性があります。

AIに調べさせる。

AIに整理させる。

人が原資料を確認する。

そして、資格者や責任者が判断する。

この順番を崩さない。

生成AIを「建築士の代わり」にするのではなく、

確認漏れを減らし、面倒な整理作業を手伝ってくれる補助者として使う。

現時点では、それくらいの距離感がちょうどいいのではないかと思います。


参考資料

国土交通省は、AIを利用して確認申請図書の必要事項の記載状況などを事前確認する「建築確認申請図書作成支援サービス」を2025年11月に開始しました。なお、このサービスは法令への適合性を審査するものではありません。国土交通省

国土交通省「AIが建築確認申請図書の作成をサポートします!」

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この記事を書いた人

mashiのアバター mashi 一級建築士・宅建士・賃貸不動産経営管理士|施工管理・設計監理・発注者側PMの実務経験を持つ、建築・不動産の実務家

一級建築士・宅建士・賃貸不動産経営管理士。施工管理、設計監理、発注者側のプロジェクトマネジメントに携わってきました。建築・不動産の実務で必要になる資料の見方、確認の順番、関係者への質問を、経験と一次情報をもとに解説します。

コンストラクションマネジメント、新規投資物件の取得検討、保有不動産の処分検討にも携わってきました。個別案件は条件によって異なるため、契約・設計・投資の判断では、原資料と専門家への確認を優先してください。編集方針:https://mashi0-1.com/editorial-policy/

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