マンション管理組合がAIで理事会議事録を下書きする方法|新任理事のための5区分テンプレート
この記事はこんな人に向けて書いています
- 職業・立場:築15〜30年、50〜100戸規模のマンションで初めて書記または理事長を担う区分所有者
- 悩み・状況:理事会の発言が多く、決議・継続課題・宿題を議事録に整理する時間が足りない
- 達成したいこと:AIで下書きを効率化しつつ、議長確認と説明責任を失わない運用を作りたい
理事会が終わった夜、録音データや手書きメモを前にして「誰が、いつまでに、何をするのか」が思い出せない。修繕積立金の話では複数の意見が交わされ、管理会社からの報告と理事の提案が混ざってしまう。マンション管理組合の議事録づくりは、単なる要約ではなく、後から住民が読んでも経緯を追える合意記録です。
そこで役立つのが、PerplexityなどのAIを公式資料の確認や論点整理、議事録の下書きに限定して使う方法です。ただしAIの文章をそのまま承認記録にしてはいけません。管理規約、区分所有法、議決要件、修繕や費用の判断は、管理会社、マンション管理士、必要に応じて弁護士などが確認する領域です。本記事では、新任理事でも迷いにくい「5区分テンプレート」と、録音前から公開前までの実務導線を紹介します。

マンション管理組合の議事録にAIを使う前に
最初に決めるべきなのはサービス名ではなく、AIに渡してよい情報と渡してはいけない情報の境界です。住戸番号、氏名、電話番号、滞納状況、病気や介護に関する事情、居住者間のトラブル、未公開見積、口座情報などは匿名化または入力対象外にします。
Perplexityは公式資料や法令の条文を確認する入口として便利ですが、検索結果に引用があっても、自マンションの規約解釈が確定するわけではありません。標準管理規約と実際の規約が異なることもあります。AIには「該当条文候補を示す」「確認論点を列挙する」と頼み、最終判断は原文と専門家に戻します。IT活用については全国マンション管理組合連合会の資料も参考になります。
AIに任せる仕事、人が行う仕事
| 作業 | AIに任せやすい範囲 | 人が確認する点 |
|---|---|---|
| 文字整理 | 発言メモを論点別に並べ替える | 趣旨、否定、保留のニュアンス |
| 5区分分類 | 決議、継続検討、担当などの仮分類 | 決議成立、採決方法、賛否 |
| 資料確認 | 法令・公的資料の論点候補 | 規約との整合、相談要否 |
| 文章化 | 読みやすい下書き | 公開範囲、個人情報、誤解 |
議事録を安定させる5区分テンプレート
おすすめは、理事会の話題を次の5区分に固定することです。「要約」だけでは、決まった話と決まっていない話が同じ段落に並びます。5区分なら、次回冒頭で宿題を確認でき、居住者への周知文も作りやすくなります。
1. 決議事項
採決した内容、承認範囲、実施条件を記録します。「大規模修繕を行う」ではなく、「長期修繕計画の見直しを専門家に依頼する」「候補者から見積を取得する」と行為に分解します。総会決議が必要な事項を理事会だけで決めたように書かないことが大切です。
2. 継続検討
意見が割れたこと、資料不足で見送ったこと、次回に持ち越したことを記録します。AIは会話量の多い意見を結論と誤認する場合があるため、「決定なし」「次回資料確認後に再協議」と人が修正します。
3. 担当・期限
内部の進行表では担当役割と期限を具体化します。「管理会社が確認」ではなく、「給水ポンプの過去3年の修繕履歴を次回理事会の7日前までに共有」のように、成果物と期限をセットにします。
4. 居住者周知
全住戸に知らせる内容と理事会内だけの内容を分けます。断水、工事日時、共用部の使用制限、アンケート締切は周知候補です。個別苦情や住戸が特定できる事情は公開議事録に載せません。
5. 専門家確認
規約解釈、議決要件、管理費・修繕積立金の使途、契約解除、損害賠償などはAIに答えを出させる欄ではありません。「管理会社へ確認」「マンション管理士へ相談」「弁護士に照会」と次の確認先を記録します。区分所有法はe-Gov法令検索で原文を確認できます。
| 区分 | 記入例 | 議長の確認質問 |
|---|---|---|
| 決議事項 | 漏水調査の見積を3社から取得 | 発注までか、見積だけか |
| 継続検討 | 宅配ボックス増設は費用資料後に再協議 | 次回までに何が必要か |
| 担当・期限 | 管理会社が7月末までに比較表を提出 | 期限と提出物は明確か |
| 居住者周知 | 8月10日午後に共用部を一時閉鎖 | 誰にいつ知らせるか |
| 専門家確認 | 規約上の議決要件を照会 | AIを根拠にしていないか |
録音前の周知とAIに渡す前の匿名化チェック
録音前に、議長が目的と利用範囲を説明します。参加者が知らないまま録音すると、後から保存目的が問題になります。次の文面を冒頭で読み上げ、議事録にも残してください。
本日の議事整理のため、発言内容を録音します。録音は議事録の下書き作成と確認が終わるまで管理し、外部共有はしません。AIを使う場合は氏名・住戸番号・連絡先を匿名化し、下書き作成後は議長と書記が確認します。懸念がある方は開始前に議長へお申し出ください。
これは組合の規約や運用に合わせて修正します。録音しない場合でも、書記が決議、保留、宿題を読み上げて認識をそろえられます。
匿名化チェックリスト
- 氏名、住戸番号、電話番号、メールを役割名に置き換えたか。
- 「上階の高齢者」など組み合わせで特定できる表現を削ったか。
- 滞納、病気、家族構成、苦情を入力していないか。
- 未公開見積、契約条件、業者名を一般化したか。
- 図面、鍵情報、防犯設備の詳細、パスワードを添付していないか。
- サービスの学習利用、保存期間、権限を確認したか。
匿名化は単語置換だけでは足りません。「302号室の漏水で先週電話した人」のような文は氏名を消しても特定できます。入力前に、この文章が公開されたら誰が困るかを考え、情報を最小化してください。

Perplexityに渡すプロンプトと下書きの手順
AIには判断ではなく分類と抜け漏れの発見を依頼します。素材は匿名化したメモ、発言要旨、公開可能な資料に限定します。
議事録下書き用プロンプト
あなたはマンション管理組合の議事録編集補助です。以下の匿名化済みメモだけを使い、事実を追加せずに整理してください。出力は「1.決議事項 2.継続検討 3.担当・期限 4.居住者周知 5.専門家確認」の5区分とし、該当なしはそう書いてください。決議と提案、質問と承認を混同しないでください。採決方法・賛否・成立条件がない場合は「議長確認」と表示してください。特定表現は一般化し、最後に確認が必要な箇所を示してください。
下書き後の確認ルート
まず書記が原メモと照合し、次に議長が判断の境界を確認します。管理会社は設備・契約・過去経緯の事実確認を担当し、専門家は必要な論点だけ確認します。
| 担当 | 主な役割 | 確認質問 |
|---|---|---|
| 書記 | 発言・資料照合、5区分整理 | AIが追加した事実はないか |
| 議長 | 決議・保留・周知範囲を確定 | 理事会の意思を表すか |
| 管理会社 | 契約、設備、工事履歴を確認 | 金額・仕様・期限に誤りはないか |
| 専門家 | 規約、法令、議決要件を助言 | 総会決議や手続が必要か |
AIの出力を受け取ったら、自然な文章ほど注意します。採決していない案件が「承認された」と読めることがあるためです。迷ったときは決議事項から継続検討へ戻し、次回に確認するほうが安全です。
管理会社・議長・書記の役割分担
AIを導入しても責任の所在は整理されません。「管理会社に議事録を作っておいて」と丸投げせず、作成者、確認者、公開承認者を決めます。運営全体はマンション管理組合の運営ガイドも参照してください。
公開前チェック
- 開催日時、出席者、議題が実記録と一致している。
- 理事会の権限を超える約束や発注確定の表現がない。
- 継続検討が結論のように書かれていない。
- 担当と期限が「対応する」だけになっていない。
- 周知の日時、場所、影響範囲が足りている。
- 個人が特定できる苦情、病歴、滞納、住戸情報がない。
- 議長が全文を読み、公開を承認した。
訂正が必要になった場合も、元記録を消して痕跡をなくすのではなく、訂正日、箇所、理由を残す運用を検討します。規約や管理会社の文書管理ルールに合わせてください。
現場の裏話:揉めるのは文章力より「決まった範囲」
よくある場面
ある理事会でエントランス改修について「前向きに進めよう」という発言がありました。AIは会話を「改修を進める方針で合意」と要約しましたが、実際に決まったのは複数案を比較することだけでした。議長が「発注、業者選定、予算承認のどこまでが今日の決議か」を確認し、議事録は「比較資料を作成し次回協議」に修正されました。
この差は費用負担や住民説明では大きな違いになります。AIの要約を信じるより、5区分を埋めながら議長に問い返すほうが実務に効きます。
AI議事録を使わないほうがよいケース
個人間紛争、滞納や立退き、事故・漏水の責任追及、契約解除、訴訟の可能性がある案件ではAIへの入力を避けます。AI出力を証拠や正式な承認記録として扱うのも不適切です。音声認識には誤認識があり、固有名詞、数字、否定表現を取り違えます。重要案件は出席者が要点を確認し、専門家に相談してください。
管理会社が指定するシステムや組合承認済みのアカウントを使う場合も、保存場所と権限を確認します。退任後のアカウント削除まで決めておきましょう。

よくある質問
Q1. AI議事録をそのまま配布できますか?
できません。AI出力は下書きです。書記と議長が原メモ、決議、個人情報、公開範囲を確認します。
Q2. 法令をPerplexityに質問できますか?
条文候補や論点探しには使えますが、規約解釈や議決要件の確定はできません。原文と専門家の確認が必要です。
Q3. 録音は必須ですか?
必須とは限りません。録音する場合は目的、利用範囲、保存期間を事前に周知します。
Q4. 住戸番号を伏せれば入力できますか?
状況の組合せで特定される場合があります。氏名以外も一般化し、入力を最小限にします。
Q5. 修繕費や業者をAIに比較させられますか?
公開可能な条件整理に限定し、未公開見積や契約情報は慎重に扱います。品質、安全、金額、契約は人が判断します。
まとめ:AIは議事録係ではなく確認漏れを減らす補助役
マンション管理組合 議事録 AIの実務で大切なのは派手な自動化ではありません。録音前に周知し、入力前に匿名化し、出力を「決議事項/継続検討/担当・期限/居住者周知/専門家確認」の5区分に分け、最後は議長が確認する。この流れを毎回同じにすることで、新任書記でも品質を安定させられます。
AIは管理規約や区分所有法の解釈、議決要件、修繕・費用・契約・安全の最終判断を担えません。短縮できた時間を、読み上げ確認、住民への説明、専門家への相談に回してください。

