この記事はこんな人に向けて書いています
- 職業・立場:地域密着型の不動産仲介会社で、反響対応と追客を担う営業担当者
- 悩み・状況:メール作成と物件提案の下準備に追われ、顧客と話す時間が足りない
- 達成したいこと:Geminiを使い、初動の速さを落とさず、一人ひとりに合った提案へ時間を使いたい
ポータルサイトの反響が入る。返信文を書き始めたところで電話が鳴り、戻ってきたら別の案件の追客期限が迫っている。不動産営業の忙しさは、商談そのものよりも、その前後にある「言葉を整える仕事」によって膨らみます。
そこで役立つのが、Googleの生成AI Gemini です。ただし、私は「AIに営業を任せれば成約する」とは考えていません。AIが担うべきなのは、返信文のたたき台、聞くべき質問の整理、面談メモの構造化です。顧客が本当に重視していることを見抜き、最後の一言を選ぶのは営業担当者の仕事です。
この記事では、一級建築士・宅建士として不動産の現場を見てきた視点から、反響対応・追客メール・物件提案で使えるGeminiの実践プロンプトを7つ公開します。顧客名や住所を入れずに使える形にしているので、まずは今日の反響1件から試してください。

不動産営業でGeminiを使う前に:まず守るべき3原則
プロンプトを紹介する前に、線引きをはっきりさせます。不動産取引では、わずかな確認漏れが信頼を失う原因になります。Geminiは優秀な下書き担当ですが、宅建士や営業担当者の責任を代わるものではありません。
| 原則 | 実務での意味 | 具体例 |
|---|---|---|
| 個人を特定する情報は入れない | 氏名、電話番号、詳細住所、年収、家族固有の事情をマスキングする | 「田中様」ではなく「30代・共働き・子ども1人の購入検討者」と入力する |
| 数字と物件事実は人が照合する | 価格、面積、駅徒歩分数、法令、学区、設備、募集条件を生成文のまま送らない | レインズ、物件資料、重要事項説明書、社内承認済み情報に戻って確認する |
| 送信前に「顧客の言葉」を一文足す | AIの一般論を、相手が相談した内容へ戻す | 「日当たりより在宅勤務の静けさを優先したい、というお話に合わせて…」を足す |
Google Workspace with Geminiでは、Gmailのメール下書き、Docsでの文章作成・編集、Drive上の情報活用などが提供されていますが、利用できる機能は契約中のエディションによって異なります。まずは会社の管理者またはGoogle Workspaceの設定を確認してください。[1]
重要:個人アカウントと、組織で管理されたGoogle Workspaceでは前提となる保護や管理機能が異なります。対象となるWorkspace環境では既存の権限・データ保護が適用されますが、利用前に自社の契約、アクセス権、保存設定、社内規程を必ず確認してください。[2]
宅建業法、建築基準法、税務、契約条項、価格査定に関する最終判断は、必ず担当者・宅建士・各専門家が行ってください。

不動産営業の流れに沿って使う:Gemini実践プロンプト7選
以下のプロンプトは、Geminiアプリでも、利用可能な場合はGoogle Workspace内でも使えます。角括弧の部分だけ、自社の実情に置き換えてください。特定の顧客や物件を識別できる情報は入力しないことが前提です。
1. 反響直後の「初回返信」を30秒で下書きする
初回返信は、情報量よりも「ちゃんと読んでくれた」という安心感が重要です。定型文をそのまま返すと、返信は早くても会話が始まりません。Geminiには、返信の目的と、聞きたいことを限定して渡します。
あなたは地域密着型の不動産仲介営業です。 ポータルサイトから問い合わせがあった購入検討者への初回返信メールを作成してください。 【問い合わせ内容】 ・検討している物件:駅徒歩10分以内の中古マンション ・想定する読者像:30代共働き、在宅勤務あり ・返信で伝えたいこと:問い合わせへのお礼、物件資料を確認していること、内見希望日時、優先条件を2つだけ聞くこと 【制約】 ・250〜320字 ・押し売りに見える表現は避ける ・物件の価格、面積、設備など、入力されていない事実を作らない ・件名を3案付ける ・最後は「まずはご希望を2点だけ教えてください」と自然に聞く
出力後は、相手が問い合わせた物件名や、実際に確認済みの情報だけを人の手で補います。ここで大切なのは、AIに回答させることではなく、最初の返信を後回しにしない仕組みを作ることです。
2. 初回電話で聞き漏らしを減らす「質問設計」を作る
初回電話は、条件をすべて聞き出す場ではありません。次の提案につながる優先順位をつかむ場です。忙しいと質問が散らかりがちなので、先に聞く順番を作ります。
不動産購入の初回電話で使うヒアリング項目を作成してください。 相手は、エリアはまだ絞れていないが、通勤時間と在宅勤務のしやすさを気にしている共働き世帯です。 出力形式: 1. 冒頭30秒で安心してもらう言葉 2. 必ず確認する質問を5つ 3. 深掘り用の質問を3つ 4. 今日の電話で決めなくてよいこと 5. 電話の終わりに次の行動を約束する一文 専門用語を使わず、営業が会話中に見返せる短い箇条書きにしてください。
「予算はいくらですか」から入ると、会話が早く閉じることがあります。先に通勤、暮らし方、いつまでに決めたいかを聞き、その後に予算の考え方へ進む方が、顧客の本音が出やすい場面は少なくありません。
3. 物件提案の説明文を「条件の羅列」から「暮らしの提案」へ変える
物件情報はポータルサイトでも読めます。営業担当が付け加えるべきなのは、「なぜこの物件をあなたに送ったのか」という理由です。Geminiには物件スペックを書かせるのではなく、相手の優先条件と結び付ける文章を作らせます。
購入検討者へ送る物件提案メールの本文を作成してください。 【顧客が重視すること】 ・在宅勤務用に、リビング以外の静かな作業場所がほしい ・駅から遠すぎないこと ・日当たりを重視 【物件について、確認済みの事実】 ・2LDK+サービスルーム ・最寄駅から徒歩8分 ・南東向き 【条件】 ・物件の魅力を3点に絞る ・入力されていない事実は書かない ・不確かなことは「内見時に確認しましょう」と表現する ・最後に内見時の確認ポイントを2つ提案する ・350字以内
「サービスルーム」を、相手にとって「在宅勤務用の独立した場所として検討できる可能性」と言い換える。この翻訳が営業の価値です。ただし、採光や用途、実際の使い勝手は図面と現地で確認する必要があります。AIは言い換えを助け、人は誤解を防ぎます。

4. 追客メールを「送る理由のある一通」にする
追客で嫌われるのは、連絡そのものではなく、顧客にとって理由のない連絡です。Geminiを使うときは、同じ顧客に送るメールを量産するのではなく、検討段階に合わせた三つの型を作っておくと実務で回ります。
不動産購入を検討しているお客様への追客メールを、次の3パターン作成してください。 A:問い合わせ直後で、まだ電話がつながっていない B:内見後で、家族と相談中と言われている C:2週間連絡がないが、押し売りにならずに接点を持ちたい 共通条件: ・各250字以内 ・「ご検討いかがでしょうか」だけで終わらせない ・返信しやすい選択肢を一つ入れる ・数字や物件の断定は入れない ・丁寧だが、回りくどくない文体にする
実際に送る前に、「前回の会話で出た言葉」を一文だけ入れてください。たとえば「お子さまが転校しない時期を考えたい、というお話でしたので」のような一文です。これがあるだけで、AIの下書きが自分の営業文になります。
5. 内見前に、担当者自身の「確認シート」を作る
内見の価値は、鍵を開けることではありません。顧客が見落としがちな不安を一緒に確認し、判断できる状態にすることです。顧客の優先条件に合わせた確認シートを先に作っておくと、内見の会話が深くなります。
中古マンションの内見前に、営業担当者が使う確認シートを作成してください。 対象顧客は「日当たり」「在宅勤務の静けさ」「ベビーカーでの移動しやすさ」を重視しています。 次の4分類で、現地で確認する項目を各3つずつ出してください。 ・室内 ・共用部 ・周辺環境 ・管理状況 重要:法律、設備仕様、管理規約などは、現地や正式資料で確認が必要である旨を最後に明記してください。
このシートは顧客に渡すためではなく、まず営業担当者が見落としを減らすためのものです。下見の精度が上がると、「この担当者は話を覚えてくれている」という信頼につながります。
6. 面談メモを「次の一手」に変換する
面談後のメモは、書いた瞬間に価値があります。数日後には曖昧になります。Geminiにメモを整理させ、次回までの行動と、確認すべき論点をその日のうちに作っておきましょう。
以下は、不動産購入相談の匿名化済み面談メモです。 営業担当の次の行動を整理してください。 【メモ】 ・通勤は片道45分以内が理想 ・来春までに住み替えたい ・子どもの小学校はできれば変えたくない ・新築より中古も含めて検討する方向に変わった ・配偶者は収納量を強く気にしている 出力形式: 1. 顧客の優先順位を3つ 2. 次回提案する物件の条件 3. 次回の連絡で確認する質問を3つ 4. CRMへ残す一行要約 推測で事実を足さず、メモ内の情報だけを使ってください。
ここで作るCRM用の一行要約は、担当交代や休暇中の引き継ぎにも役立ちます。営業ノウハウを個人の記憶だけに置かないことが、チームの強さになります。
7. 週次の振り返りで「失注理由」を言語化する
反響数だけを追っても、営業の改善点は見えにくいものです。失注や停滞案件を感情ではなくパターンとして振り返ると、次週に変えるべき行動が見えてきます。
不動産仲介営業の週次振り返りを手伝ってください。 以下は、個人が特定されないように整理した今週の案件メモです。 ・反響8件、電話接続5件、内見2件 ・内見後に1件は予算面で保留 ・2件は返信が途切れた ・提案した物件は駅距離を優先したが、収納への反応が弱かった 出力してほしいもの: 1. 事実と推測を分けた要約 2. 来週試す改善仮説を3つ 3. 追加で記録すべき指標を3つ 4. チームミーティングで聞くべき質問を2つ 断定せず、仮説として表現してください。
AIに「成約しなかった理由」を断定させないことも大切です。Geminiは仮説を広げる役。決めつけず、次に顧客へ何を聞くかを考える役として使うと、営業の感度を鈍らせません。
一級建築士・宅建士として、AIに任せない3つの領域
文章を整える仕事と、専門的な判断は別の仕事です。ここを混ぜると、不動産営業におけるAI活用は危険になります。
- 物件・契約・法令の最終確認:面積、用途地域、管理規約、告知事項、契約条件、重要事項説明に関わる表現は、公式資料と宅建士の確認が必要です。
- 価格や資金計画の確定的な助言:相場感を整理する補助として使えても、個別の査定、融資判断、税務判断をAIの出力だけで決めてはいけません。
- 顧客の不安を受け止める会話:購入を迷う理由は、間取りや価格だけではありません。家族の意見、転職、介護、子どもの進学など、数字にしにくい事情を聞く時間こそ、営業担当がつくるべき価値です。
現場の裏話:返信を一番速くした会社が、必ず選ばれるわけではありません。
現場で差が出るのは、返信文の中に「相手が先ほど話した優先条件」が入っているかどうかです。顧客は、物件を探しているようで、実は自分たちの暮らしを理解してくれる人を探しています。Geminiに下書きを作らせて浮いた5分で、顧客の言葉を一つ返す。その5分の使い方が、定型メールとの違いを生みます。
最初の15分で始めるGemini導入手順
いきなり全案件で使う必要はありません。まずは、個人情報を含まない一件の初回返信から始めてください。
| 時間 | やること | 終わったときの状態 |
|---|---|---|
| 5分 | 社内で入力してはいけない情報を確認する | 氏名、住所、電話番号、詳細な資金情報を匿名化するルールが決まる |
| 5分 | この記事の「初回返信」プロンプトを一件分で試す | 返信の下書きが一通できる |
| 3分 | 事実確認と、顧客の言葉を一文追加する | 送信してよい文章になる |
| 2分 | 送った後に、使えた表現・直した表現をメモする | 次回の自社用テンプレートが育つ |
最初から完璧なプロンプトは作れません。むしろ、現場で直した一文こそが、自社らしい営業の型になります。Geminiはその型を再利用できる形に整える道具です。
提案書づくりまで効率化したい方は、建設営業×ChatGPTで提案書作成を効率化する記事もあわせて読んでみてください。不動産管理の書類作成・入居者対応を効率化したい場合は、Microsoft Copilotで不動産管理を効率化する実プロンプト集が役立ちます。
よくある質問
Geminiに顧客名や物件住所を入力してもよいですか?
まずは入力しない運用から始めてください。匿名化した情報でもプロンプトは十分に作れます。組織のGoogle Workspaceで利用する場合も、契約プラン、管理者の設定、アクセス権、社内規程を確認したうえで、情報管理のルールを決める必要があります。[2]
無料版とGoogle Workspace版のどちらを使うべきですか?
個人の文章整理を試す段階と、チームのメール・資料・Driveを業務で扱う段階では、求める管理水準が異なります。Google Workspace with Geminiの機能はエディションにより違うため、現在の契約で使える範囲を確認し、会社としての利用ルールを先に決めてください。[1]
AIが書いたメールはそのまま送ってよいですか?
おすすめしません。物件情報、価格、条件、日付、法令に関する記載を必ず確認し、顧客が前回話した内容を一文加えてから送ります。AIの文章は下書きであり、送信責任は営業担当者にあります。
まとめ:AIで取り戻すべきは「顧客に向き合う時間」
不動産営業でGeminiを使う意味は、メールを大量生産することではありません。反響への初動、追客の下書き、提案の整理、面談メモの構造化を速くし、その分だけ相手の迷いを聞く時間を取り戻すことです。
まずは次の反響一件で、この記事の最初のプロンプトを使ってみてください。返信の速度が上がったら、次に「顧客の言葉を一文返す」ことを試す。AI活用は、その小さな改善の積み重ねで営業の質を変えていきます。
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