この記事はこんな人に向けて書いています
- 会社ではMicrosoft 365を使い、Copilotも使えるのに、提案書づくりでは結局WordとExcelを行き来して転記している人
- ヒアリングメモ、見積書のExcel、提案書のWordが別ファイルに散らばり、内容の突き合わせに時間を取られている人
- Copilotに提案書や見積書の下書きを任せたいが、金額まで任せてよいのか線引きに迷っている人
はじめまして。一級建築士・宅建士として不動産・建築の実務に20年以上携わっている「mashi」です。
Copilotの強みは、チャットの賢さそのものよりも、Word・Excel・PowerPointの中にいることです。営業の提案書と見積書は、もともとOfficeファイルの往復でできています。ヒアリングメモをWordにまとめ、見積をExcelで組み、提案書をWordで書き、説明用にPowerPointへ移す。この往復の転記と突き合わせが、営業資料づくりの一番地味で重い作業です。Copilotは、その往復の中で「元ファイルを参照して下書きを作る係」として使うのが本筋です。ただし、金額の確定と条件の判断は人がやります。この記事では、その手順とコピペ用プロンプトを紹介します。
結論:Copilotは「ファイルを読んで下書きする係」、金額と条件の確定は人がする
先に結論をまとめます。
- Copilotに任せるのは、ファイル参照の下書き:ヒアリングメモ・見積Excel・過去の提案書を参照した章立てと本文の下書き、見積表の説明文への変換、Word文書からのPowerPoint作成、2つのファイルの食い違いの洗い出し
- 人が必ず確定するのは3つ:金額(数量・単価・諸経費)、工事範囲と別途・除外の条件、工期と性能の表現
- 正本は元ファイル:Copilotの出力は下書きとして扱い、直すときは元ファイル側を直す。出力だけを直すと、次に参照したときに古い内容が戻ってくる
提案書の事故は、文章の上手さではなく「見積と違うことが書いてある」「含まれないものが含まれるように読める」で起きます。Copilotの役割は、その食い違いを提出前に見つけやすくすることにあります。
ChatGPTで作る場合との違いは「どこで作るか」
同じ営業提案書でも、ChatGPTとCopilotでは作業の置き場所が違います。ChatGPTは、素材をチャットに貼って使うのが基本です。CopilotはMicrosoft 365の中で動くため、次の点が変わります。
- 提案書のWord、見積書のExcel、発表用のPowerPointが、ファイルを貼り直さずにつながる
- 共有フォルダ(OneDrive・SharePoint)に置いた過去の提案書や自社フォーマットを、参照元として指定できる
- 会社のMicrosoft 365の管理下で使う形になるため、入力できる情報の扱いは自社の契約と管理設定に従う(使う前に自社のルール確認が前提になる)
自分の答えは、会社がMicrosoft 365で業務を回しているなら、提案書・見積書のようなファイルの往復が多い仕事はCopilotから試す、です。逆に、社外の調べ物や単発の文章づくりは、他のAIでも差は出にくい。道具の優劣ではなく、仕事の置き場所で選ぶのが実務的です。
AIに任せる仕事・任せない仕事
使い始める前に、役割を切り分けてください。線引きが曖昧なまま使うと、Copilotの整った下書きをそのまま確定稿にしてしまう危険があります。
| AIに任せる仕事 | 人が必ず確定する仕事 |
|---|---|
| ヒアリングメモを参照した、提案書の章立てと本文の下書き | 提案する工事・業務の範囲と仕様の確定 |
| Excelの見積表をもとにした「費用の考え方」の説明文の下書き | 数量・単価・諸経費・合計金額 |
| 提案書のWord文書から、PowerPointの下書きを作る | 工期・施工条件・別途工事の条件 |
| 提案書と見積書の食い違いの候補の洗い出し | 性能・効果の表現、契約条件の判断、提出の承認 |
言い換えると、Copilotは「ファイルを読んで、人が判断しやすい形に並べ替える係」で、人は「その内容で相手に約束してよいかを決める係」です。この分担が守れていれば、下書きに間違いが混じっていても、元ファイルとの照合で止められます。
手順:Copilotで提案書を作る5ステップ
ステップ1:素材を1か所にそろえ、版をそろえる
最初に、ヒアリングメモ(Wordや会議メモ)、見積書(Excel)、過去の類似提案書、自社フォーマットの4つをそろえます。Copilotは参照したファイルの内容で下書きを作るため、古い版を参照すると、古い条件の提案書ができ上がります。ファイル名に日付を入れる、版が違うファイルを同じフォルダに混ぜない、という地味な管理が、そのまま下書きの精度になります。
ステップ2:見積のExcelを「頼める形」に整える
見積書のExcelは、項目・数量・単位・単価・金額・備考の列を分け、見出し行をそろえておきます。「一式」だけの行や、セル結合で意味が固まった表は、AIが読み違える元になります。自分は、この整える作業を手間だと思っていません。列を分けて並べ直す過程そのものが、見積の確認作業だからです。ここを飛ばすと、下書きの精度が落ちるだけでなく、後で人が確認する手間が増えます。
ステップ3:Wordで章立てと本文の下書きを作らせる
いきなり完成文を狙わず、まず章立て、次に章ごとの本文という順で作らせます。章立てがずれていたら、本文を直すより章立てを直す方が早いからです。プロンプトは後半にそのまま使える形で載せています。章の順番は、プロンプト側で指定するのがコツです。
ステップ4:見積の説明文を作り、金額パートを突き合わせる
提案書の「費用の考え方」は、見積Excelを参照して説明文に変換させます。ここで大切なのは、金額は表の値をそのまま引用させ、再計算させないことです。Excelの数式で出た値と、Copilotが計算した値がずれたら、どちらが正しいのか切り分けられなくなります。金額の正本はExcel。Copilotの仕事は値の説明であって、値そのものではありません。最後に、提案書と見積書の食い違いを洗い出すプロンプトで照合します。
ステップ5:PowerPointの下書きを作り、人が仕上げる
説明会がある場合は、提案書のWord文書からPowerPointの下書きを作らせます。ただし、スライドは発表の台本であって、提案書の代替ではありません。スライド側にだけ数字や表現が足されると、後から「言った・言わない」の議論になります。スライドの数字と表現は、提案書・見積書と照合してから本番に使ってください。
コピペ用プロンプト1:ヒアリングメモを参照して提案書の下書きを作る(Word)
Wordの中で、ヒアリングメモのファイルを参照させて使います。ポイントは、章の順番をこちらで固定することです。
あなたは建設・不動産の営業提案書の作成を補助するアシスタントです。 参照したヒアリングメモをもとに、発注者向け提案書の下書きを作ってください。 提案書の構成(この順番で): 1. 目的と背景(相手の困りごとを先に書く) 2. 現状の課題 3. 提案内容(工事・業務の範囲) 4. 費用の考え方(金額の内訳ではなく、範囲と条件の説明) 5. 進め方と役割分担 6. 未確定事項と確認のお願い 条件: - メモに書かれていない内容を補わない。分からない点は「要確認」と明記する - 金額・工期・性能を断定しない。金額が必要な箇所は「別紙見積書のとおり」と書く - 専門用語には短い補足を付ける - 各章は見出し+本文3〜5文で書く 参照ファイル:[ヒアリングメモのファイルを指定する]
構成の順番を固定しているのは、理由があります。発注者が提案書で知りたいのは、提案する側の自慢話ではなく、「自分の困りごとがどう解けるか」「いくらで、どこまで含まれているか」「何がまだ決まっていないか」の3つです。自分の答えは、この順番を崩さないことです。Copilotに自由に書かせると会社紹介から始まる文章になりがちなので、順番はプロンプトで指定します。
コピペ用プロンプト2:Excelの見積書から「費用の考え方」の説明文を作る
提案書の中で一番事故が起きやすいのが、金額の説明です。見積Excelを参照させ、値は引用だけに限定して使います。
あなたは見積書の説明文作成を補助するアシスタントです。 参照したExcelの見積書をもとに、提案書に載せる「費用の考え方」の説明文を作ってください。 出力する内容: 1. この見積に含まれている工事・業務の範囲(項目名ベースで) 2. 含まれていないもの・別途になる条件 3. 金額が変わる要因(数量・仕様・現地条件など、表の備考にある範囲で) 条件: - 金額は表に書かれた値をそのまま引用する。再計算・端数処理・合計の出し直しはしない - 表にない項目・条件を推測で追加しない。読み取れない項目は「確認が必要」と書く - 単価の妥当性には触れない - 発注者が読んで分かる言葉に置き換える 参照ファイル:[見積書のExcelファイルを指定する]
「再計算させない」という条件は、必ず入れてください。Excelの数式で積み上げた合計と、Copilotが暗算した合計が1円でもずれると、提出前の確認作業が全部やり直しになります。見積書の金額は、数量と単価という根拠の積み上げです。その根拠を持っているのはExcelと積算担当者であって、Copilotではありません。
コピペ用プロンプト3:提案書のWordからPowerPointの下書きを作る
説明会用のスライドは、提案書の文書を参照させて作ります。数字を足させない条件が要点です。
あなたはプレゼン資料の作成を補助するアシスタントです。 参照した提案書の文書をもとに、発注者向け説明会用のスライド構成を作ってください。 スライドの割り当て: 1. 表紙(提案名と相手先) 2. 目的と背景 3. 現状の課題 4. 提案内容 5. 費用の考え方 6. 進め方 7. 未確定事項と確認のお願い 条件: - 1スライド1メッセージ。見出しは結論を言い切る形にする - 箇条書きは1スライド4点まで - 文書にない数字・効果を足さない - 金額は文書の記載をそのまま使い、変形しない 参照ファイル:[提案書のWordファイルを指定する]
スライドの下書きができたら、提案書と並べて数字と表現を照合します。特に「費用の考え方」のスライドは、見積書の別途条件が落ちていないかを確認してください。説明会の場で資料に書いてあることと口頭の説明がずれると、後日の議事録や再提出で必ず効いてきます。
コピペ用プロンプト4:提案書と見積書の食い違いを洗い出す
提出前の最終チェックです。2つの元ファイルを直接参照して読み比べられるのが、Copilotでやる意味です。
あなたは提案書と見積書の照合を補助するアシスタントです。 参照した提案書と見積書を読み比べ、食い違いの候補を表で出してください。 出力する表の列: 1. 対象(項目・章) 2. 提案書の記載 3. 見積書の記載 4. 食い違いの種類(範囲/数量・単位/条件/記載なし) 5. 人が確認すべき点 条件: - どちらが正しいか判断しない。候補の洗い出しだけを行う - 片方にしか書かれていない内容は「記載なし」と明記する - 金額の合計の検算はしない - 候補が見つからなかった場合は「候補なし」とだけ書く 参照ファイル:[提案書と見積書の2ファイルを指定する]
候補が出たら、必ず元ファイルの該当箇所を人が開いて確認します。Copilotの指摘が正しいとは限らず、逆に指摘されなかった箇所に食い違いが残っていることもあります。このプロンプトは「チェックが終わった証明」ではなく、「見るべき場所の付箋」として使ってください。
見積書を作るときに落とすと危ない4項目
ここからは、AI以前の話です。自分の答えは、見積書の事故は合計金額の計算ミスより、「範囲と条件の書き落とし」で起きる、ということです。Copilotの下書きを使う場合も、次の4つは人が先に枠を作っておかないと、下書きごと抜け落ちます。
1. 別途・除外の書き落とし
撤去・処分・運搬・既存部分の改修など、「含まれないもの」を書かない見積書は、後から追加費用の議論になります。AIの下書きは、含まれているものの説明は得意でも、含まれないものの列挙は苦手です。除外の欄は、AIに考えさせるのではなく、人が先に項目の枠を作り、中身を確認しながら埋めるのが順番です。
2. 数量の根拠が残っていない
数量の隣には、その数字をどこから出したか(図面のどこか、現地確認か、実測か)を残します。根拠のない数量は、工事の変更が出たときの増減計算で揉めます。金額の正しさは、合計ではなく、この「数量には根拠があるか」「単価には出典があるか(自社の積算基準、過去の発注実績、メーカーからの見積など)」で決まります。根拠と出典が書類に残っていない見積書は、AIを使う以前に、人の仕事として未完成です。
3. 諸経費の中身が書かれていない
諸経費は、率だけが書かれていても発注者には中身が伝わりません。何を含む経費なのか(現場管理、交通・通信、書類作成など)を言葉で添えるのが、説明としての最低限です。なお、諸経費の率は会社ごとの算定の前提で決まるものなので、AIに決めさせる数字ではありません。前提が違う会社の率同士を比べても意味がない、という点も、説明のときに添えておくと誤解が減ります。
4. 金額が変わる前提条件が書かれていない
工期、作業できる時間帯、搬入の条件、既存建物の状態など、前提が崩れたら金額が変わる条件は、見積書に明記します。前提を書かない見積書は、安く見えても他の見積書と比較できません。Copilotに説明文を作らせるときも、この前提条件は見積書の備考から引用させるのが原則で、AIに考えさせる部分ではありません。
AIに任せない部分:金額の確定と条件の判断
繰り返しになりますが、線引きを具体的にしておきます。次の4つは、Copilotの下書きがどれだけ整っていても、人が決める部分です。
- 金額の確定:数量と単価の責任は積算担当者にあります。Copilotが出力した金額らしき数字は、そのまま提案書や見積書に移しません。金額は根拠(数量の出典、単価の出典)とセットで初めて確定します。
- 条件の判断:別途条件、支払い条件、保証の範囲は契約の話です。文章の整え方は任せても、条件そのものを緩めたり強めたりする決定は人がします。
- 性能・効果の表現:「快適になります」「コストが下がります」という表現は、根拠資料とセットでなければ提案書に載せません。AIの言い回しは断定調になりやすいので、根拠を示せない効果は書かないか、「条件によって変わります」と前提を添えます。
- 提出の承認:最終版を誰が承認したかを残します。下書きの作成者がそのまま提出者になる運用は、確認の目が1つ減ります。
自分は、提案書の確認では合計金額よりも先に、別途・除外の欄と前提条件の欄を見ます。金額は根拠がそろっていれば後からでも検証できますが、範囲と条件の食い違いは、提出した瞬間から相手との約束になってしまうからです。確認する順番を固定しておくことが、AIを使う・使わない以前の実務の基本だと思っています。
よくある失敗と回避策
- 失敗1:古い版のファイルを参照させる — 見積を直したのに、提案書の下書きは先週の版を参照していた、という事故が起きます。参照前にファイルの日付と版を確認し、版が変わったら下書きも作り直す前提で運用します。
- 失敗2:Excelの合計をCopilotに検算させる — 検算結果がずれても、数式の間違いかAIの計算違いか切り分けられません。検算はExcelの数式と人の目で行い、Copilotには説明文だけを任せます。
- 失敗3:顧客情報や未公開の金額を、確認せずに扱う — 会社のMicrosoft 365の管理下で使う場合でも、共有フォルダの参照範囲や契約の条件は自社ごとに違います。入力・参照してよい情報の範囲は、自社のルールを先に確認してください。
- 失敗4:PowerPointの下書きをそのまま発表に使う — スライドは下書きです。数字・表現・別途条件を提案書と見積書で照合してから使います。
よくある質問
Copilotのライセンスがない会社でも、この手順は使えますか
この記事の手順は、WordやExcelの中で動くMicrosoft 365 Copilotがある環境を前提にしています。会社によっては、チャット形式のCopilotだけが使える契約の場合もあります。自社でどのCopilotが使えるかは、情報システム部門や管理者に確認してください。なお、Copilotの料金はプランや契約形態で変わるため、この記事では金額を示しません。導入の判断材料にする場合は、自社の契約条件で確認してください。
ChatGPTで作る提案書と、結局何が違いますか
作る場所が違います。ChatGPTは素材をチャットに貼って使う形で、CopilotはWord・Excel・PowerPointの中で元ファイルを参照して下書きを作る形です。会社の業務ファイルがMicrosoft 365に集まっているなら、転記が減る分だけCopilotの方が手戻りは少なくなります。文章の出来そのものより、元ファイルとの照合のしやすさで選ぶのが実務的です。
見積書の金額をCopilotに参照させても大丈夫ですか
自社のルール次第です。法人向けのMicrosoft 365の範囲で使う場合でも、共有範囲の設定や契約条件で扱いは変わります。「参照させてよいファイルはどこまでか」を先に決め、判断に迷う情報は入れないのが原則です。この線引きは、使うAIが何であっても変わりません。
提案書のページ数や章立てに正解はありますか
ページ数に一律の正解はありません。ただし章の順番には考え方があって、自分の答えは「相手が判断する順番」に固定することです。目的と課題、提案内容、費用の考え方、進め方、未確定事項。この順番が守れていれば、ページ数の多い少ないより、範囲と条件の抜け漏れがないかで評価できます。
まとめ
- Copilotの使いどころは、チャットではなくWord・Excel・PowerPointの中。元ファイルを参照させて下書きを作らせる
- 金額はExcelの値を引用だけにし、再計算させない。金額の正本は、根拠を持つ積算の側にある
- 見積書で落とすと危ないのは、別途・除外、数量の根拠、諸経費の中身、前提条件の4つ。下書きの前に人が枠を作る
- 提出前は、提案書と見積書の食い違いを洗い出し、元ファイルで人が照合してから承認する
提案書づくりで時間を食うのは、文章を書く作業ではなく、ファイルの往復と突き合わせです。Copilotにはその往復の下書きを任せ、人は金額と条件の確定に時間を使ってください。
関連記事
Copilotで見積の比較・数量拾い前のチェック・協力会社への依頼文を作る手順は、積算の記事で詳しく解説しています。
関連記事:建築積算でCopilotを使う方法|見積比較・数量拾い前チェック・協力会社依頼を速くする実践プロンプト6選
受け取った見積書の「一式」をAIに分解させてチェックする手順は、こちらの記事にまとめています。


コメント