中古住宅の内見チェックリスト|一級建築士・宅建士が「見る順番」と判断基準を解説

中古住宅の内見で基礎を確認する様子
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この記事はこんな人に向けて書いています

  • 職業・立場:中古住宅の購入を検討していて、内見の予定が入っている方
  • 悩み・状況:内見で何を見ればいいか分からず、「雰囲気が良かった」で決めてしまいそうで不安
  • 達成したいこと:購入後に大きな修繕費で後悔しないよう、現地で建物の状態を自分でも確認できるようになること

中古住宅の内見は、多くの場合30分程度で終わります。

その短い時間で間取りと雰囲気だけを見て「ここに決めた」となりがちですが、購入後に効いてくるのは、内見で見落とした劣化や不具合です。雨漏りの補修、給湯器の交換、床下の腐朽の補修。どれも数十万円単位の話になります。

私は一級建築士・宅建士として、建物の改修や維持管理、不動産の取得・売却に20年以上携わってきました。その経験から言えるのは、内見は「見る場所」より「見る順番と判断の基準」を持っているかどうかで結果が変わるということです。

この記事では、プロが現地で実際にたどる順番に沿って、内見で確認すべきポイントと、見つけたときの判断基準、修繕費の目安までを整理します。最後に、そのまま印刷して持って行けるチェック表も付けました。

この記事の結論

内見では、①外回り、②玄関・室内の傾きと建具、③雨漏り・水漏れのサイン、④水回りと設備、⑤点検口の中、の順に確認します。気になるサインを見つけたら、その場で結論を出さず、「修繕費の目安」と「専門家調査が必要か」で判断を分けることが大切です。

目次

内見の前に準備すること|持ち物と時間の考え方

内見は「見学」ではなく「簡易調査」です。準備で確認できる範囲が大きく変わります。

持ち物 使い道
スマートフォン 写真記録、水平器アプリで床の傾きの目安を確認、懐中電灯代わり
メジャー(3.5m以上) 冷蔵庫・洗濯機・家具の搬入可否、部屋の実寸確認
この記事のチェック表 確認漏れを防ぐ。印刷するかスマホで開いておく
筆記用具・メモ 不動産会社の回答と「未確認」の事項をその場で記録

時間は最低でも60分を確保してください。30分の内見では、建物の状態確認はほぼできません。複数の物件を同じ日に見る場合は、物件ごとに写真とメモを分け、順番を決めてから現地に入ることが重要です。

また、雨の日の内見は避けられがちですが、雨漏りや排水の確認にはむしろ好条件です。日当たりの確認は別日に補う前提で、天気が悪い日の内見も候補に入れてください。

プロの見る順番|外から中へ、大きな欠陥から小さな不具合へ

内見の順番には理由があります。建物の構造に関わる重大な問題ほど、外側と「水の動き」に現れるからです。

順番 確認エリア 主な目的
1 外回り(基礎・外壁・屋根・敷地) 構造と雨仕舞いの状態を把握する
2 玄関・室内(傾き・建具・床) 建物のゆがみと沈下の兆候を見る
3 天井・壁・窓まわり 雨漏り・水漏れのサインを探す
4 水回り・設備 漏水と設備の寿命を確認する
5 床下・小屋裏の点検口 腐朽・シロアリ・雨漏りの最終確認
6 書類との照合 現地で見た内容と告知・資料の整合を取る

以下、順番に解説します。

1. 外回り|基礎のひび割れは「幅」で判断する

基礎

基礎コンクリートのひび割れ(クラック)は、幅が判断の分かれ目です。

  • 幅0.3mm未満の細いひび:乾燥収縮などによるものが多く、直ちに問題とは限りません
  • 幅0.5mm以上のひび、横方向に長く伸びるひび、ひびから茶色いさび汁が出ている:内部の鉄筋の腐食や、建物の動きが関係している可能性があります。要確認です

名刺の厚さがおよそ0.3〜0.5mmの目安になります。気になるひびには名刺を当てて写真を撮っておくと、後で専門家に見せるときに役立ちます。

外壁と屋根

  • 外壁の目地(コーキング)がひび割れたり、痩せて隙間ができていないか
  • 外壁材そのものの反り、浮き、大きなひびがないか
  • 地上から見える範囲で、屋根材のズレ・割れ、雨どいの外れや詰まりの跡がないか
  • 外壁を手で触ると白い粉が付く(チョーキング)場合は、塗膜の寿命が近いサインです

敷地と境界

  • 隣地との境界標(杭やプレート)があるか
  • ブロック塀や擁壁に傾き、大きなひびがないか(擁壁の補修は高額になりやすい部位です)
  • 雨水の排水先、敷地内の水はけ(雨の日は特に分かりやすい)

2. 玄関・室内|傾きと建具の動きは建物のゆがみを映す

室内に入ったら、まず全部のドアと窓を開け閉めしてください。建具の引っかかりや、閉めたドアが勝手に動く現象は、床や建物の傾き・ゆがみの代表的なサインです。

傾きの目安

床の傾きは、スマートフォンの水平器アプリでも大まかに測れます。判断の参考として、住宅の品質確保に関する制度では、床の傾斜が「6/1000」(1mで6mm)を超えると、構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が高い水準とされています。数値はあくまで目安ですが、明らかに体感できる傾きがある場合は、専門家による計測をおすすめします。

  • ビー玉やボールが自然に転がる
  • ドアや引き戸が力をかけなくても動く
  • 壁紙の継ぎ目が斜めに裂けている(建物のゆがみで起きやすい割れ方です)

床の状態

各部屋の四隅と中央を歩き、床がフカフカ沈む場所がないか確認します。特に洗面所・浴室の入口、キッチンの前は、漏水による床下地の腐朽が進みやすい場所です。

3. 雨漏り・水漏れのサイン|「シミ」は過去の水の履歴書

雨漏りと水漏れは、中古住宅で最も見落としたくない不具合です。探す場所は決まっています。

  • 天井と壁の隅:輪ジミ、クロスの変色・浮き・剥がれ。触って湿り気がないかも確認
  • 窓まわり:サッシ周りのカビ、木部の腐食、クロスの浮き
  • 押入れ・クローゼットの奥:見えにくい場所に雨漏りの跡とカビが残りやすい。天井面まで見る
  • キッチン・洗面台のシンク下:扉を開けて、水染み、カビ臭、配管まわりの濡れがないか
  • 浴室の入口まわり:床の変色、ふやけ、ドア枠下部の腐食

シミを見つけたら、「いつ・どの場所で起きたか」「原因まで直したのか、室内の仕上げだけ直したのか」を不動産会社に確認してください。内装だけ直して水の侵入経路が残っているケースは、実務でも珍しくありません。

4. 水回り・設備|給湯器は「製造年」を見る

設備は見た目の新しさではなく、年数で判断します。

給湯器

本体側面の銘板に製造年(または型式から読み取れる年)が書かれています。給湯器の寿命の目安はおおむね10〜15年です。製造から10年を超えている場合は、購入後まもなく交換が必要になる前提で予算を見てください。交換費用の目安は、一般的なガス給湯器で15万〜40万円程度(機種・工事条件で変動)です。

実際に水を流す

  • キッチン・洗面・浴室で水を出し、水圧と排水の流れを確認(許可を得てから)
  • 排水時にゴボゴボと音がする、流れが遅い場合は、排水管の詰まりや劣化の可能性があります
  • トイレはタンクまわりの漏れ跡、床との境目の変色を確認

その他

  • 分電盤の容量(アンペア数)と回路数。現代の生活では容量不足になることがあります
  • コンセントの数と位置、エアコン設置位置と専用回路の有無
  • 24時間換気設備の有無と動作音

5. 点検口|床下と小屋裏は「開けて覗く」だけで違う

床下点検口と小屋裏(天井)点検口の場所を確認し、開けられる場合は懐中電灯で中を覗いてください。専門家でなくても分かることがあります。

  • 床下:カビ臭・湿気の強さ、木部の変色、水たまりの跡、シロアリの蟻道(土の筋)がないか
  • 小屋裏:天井面の雨染み、野地板の変色、断熱材の状態

点検口がない、または開けられない場合は、「異常なし」ではなく「未確認」として記録することが大切です。未確認の範囲が大きい物件は、購入前に建物状況調査(インスペクション)を入れる判断材料になります。

建物状況調査の活用方法や費用感については、別記事「中古住宅のインスペクション」でも解説しています。

見つけたときの判断表|サイン→疑うこと→修繕費の目安→対応

内見でサインを見つけても、その場で「買う・買わない」は決めないでください。次の表で、対応の重さを分けて考えることが重要です。費用は一般的な目安で、建物の規模・地域・工事条件で大きく変わります。

サイン 疑うこと 修繕費の目安 対応の目安
基礎に幅0.5mm以上のひび、さび汁 鉄筋の腐食、建物の動き 補修は数万円〜、原因次第で拡大 専門家調査を前提に検討
天井・壁の雨染み 雨漏り(進行中の可能性) 原因特定と補修で数万円〜50万円程度 原因と修繕履歴を確認。未解決なら調査必須
床のフカフカ(水回り周辺) 漏水による下地の腐朽 床の張り替え・下地補修で10万〜50万円程度 漏水の有無を確認し、見積もり前提で判断
給湯器が製造から10年超 寿命による交換時期 15万〜40万円程度 交換費を購入予算に織り込む
床下の蟻道・木部の食害跡 シロアリ被害 駆除・防蟻は数万円〜、部材補修は別途 専門家調査を前提に検討
外壁コーキングの割れ・痩せ 雨水の侵入経路 外壁塗装と合わせて100万円前後になることも 塗装時期と合わせて資金計画に入れる

ポイントは、「欠陥がある=買ってはいけない」ではないことです。状態と修繕費を把握できれば、価格交渉の材料にもなりますし、予算に織り込んで購入する判断もできます。怖いのは、状態が分からないまま買うことです。

6. 書類との照合|現地で見たことと、告知・資料を突き合わせる

内見の最後に、現地の確認結果と書類を照合します。

  • 物件状況等報告書(告知書):雨漏り・シロアリ・漏水の履歴の記載と、現地で見たサインが一致しているか
  • 付帯設備表:設備の有無と動作状況の記載。現地で動かした結果と違わないか
  • 建築確認済証・検査済証・図面:有無を確認。増改築がある場合は、その時期と内容も
  • 修繕履歴:屋根・外壁・防水・給湯器の工事時期と範囲

修繕履歴が残っていない物件の判断方法は、別記事「中古住宅の修繕履歴がないときは?」で詳しく整理しています。あわせて確認してください。

また、物件価格だけで予算を決めるのは危険です。購入後の修繕費まで含めた総額の考え方は、別記事「45歳で家を買うと後悔する?」の資金計画の部分も参考になります。

印刷して持って行ける内見チェック表

最後に、この記事の内容を1枚のチェック表にまとめます。内見時に上から順に確認してください。

外回り

  • □ 基礎:幅0.5mm以上のひび、さび汁、横に長いひびはないか
  • □ 外壁:コーキングの割れ・痩せ、外壁材の反り・ひびはないか
  • □ 屋根・雨どい:地上から見える範囲でズレ・割れ・外れはないか
  • □ 境界標の有無、ブロック塀・擁壁の傾きとひび
  • □ 敷地の水はけ、排水の行き先

室内

  • □ 全部のドア・窓の開け閉め(引っかかり、勝手に動く建具)
  • □ 床の傾き感覚、フカフカする場所(特に水回りの入口)
  • □ 天井・壁の隅、窓まわりのシミ・変色・カビ
  • □ 押入れ・クローゼットの奥のカビ臭と天井のシミ
  • □ 壁紙の継ぎ目の斜めの裂け

水回り・設備

  • □ キッチン・洗面のシンク下(水染み、カビ臭、配管の濡れ)
  • □ 水を流して水圧と排水の流れを確認
  • □ 給湯器の製造年(銘板)
  • □ 分電盤の容量、コンセントの位置と数

点検口・書類

  • □ 床下点検口:湿気、カビ臭、蟻道、水たまりの跡
  • □ 小屋裏点検口:天井面の雨染み、野地板の変色
  • □ 点検口がない・開けられない部位は「未確認」と記録
  • □ 告知書・付帯設備表と現地の状態の照合
  • □ 確認済証・検査済証・図面・修繕履歴の有無

まとめ|内見は「雰囲気」ではなく「状態と金額」に変える時間

中古住宅の内見で大切なのは、欠陥探しそのものではありません。建物の現在の状態を把握し、購入後に必要なお金を予算に変えることです。

順番は、外回り→傾きと建具→雨漏りのサイン→水回りと設備→点検口→書類照合。この順で見るだけで、内見の質は大きく変わります。

サインを見つけても、その場で結論を出さないこと。修繕費の目安と、専門家調査が必要かどうかで判断を分けてください。未確認の範囲が大きい場合は、契約前に建物状況調査を入れることが、結果的にいちばん安い保険になります。

内見・修繕・契約の確認事項を全体から整理したい方は、私の著書『中古住宅を買う前に読む本』(Kindle)でも、中古住宅を買う前に知っておきたい確認手順をまとめています。購入後に後悔しないための参考資料としてご活用ください。

※この記事の費用は一般的な目安であり、建物の規模・仕様・地域・工事条件によって変動します。個別の建物の状態判断は、現地確認と専門家の調査に基づいて行ってください。

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この記事を書いた人

mashiのアバター mashi 一級建築士・宅建士・賃貸不動産経営管理士|施工管理・設計監理・発注者側PMの実務経験を持つ、建築・不動産の実務家

一級建築士・宅建士・賃貸不動産経営管理士。施工管理、設計監理、発注者側のプロジェクトマネジメントに携わってきました。建築・不動産の実務で必要になる資料の見方、確認の順番、関係者への質問を、経験と一次情報をもとに解説します。

コンストラクションマネジメント、新規投資物件の取得検討、保有不動産の処分検討にも携わってきました。個別案件は条件によって異なるため、契約・設計・投資の判断では、原資料と専門家への確認を優先してください。編集方針:https://mashi0-1.com/editorial-policy/

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